2022年9月 赤坂 菊乃井

京都の老舗料亭「菊乃井」の赤坂店に行ってきた。
門のところから石畳の道が長く続いていて、暗くなりかけた中足元に灯りが置いてあって京都や旅館のようだった。今回はカウンターだったが、カウンターの向こうにガラス越しに石灯籠の置かれた立派な日本庭園が見える。カウンターの向こうにお庭というのは初めての眺めだった。また、店内に鈴虫の声が鳴り響いていることに途中で気付いた。後で知ったところによると本物の鈴虫を飼っているらしい。
9月は重陽節句ということで、まずは伏せられた盃を手に取り、菊の花びらを浮かべた菊花酒が振る舞われる。

・猪口
茶豆豆腐、だだちゃ豆餡、花穂紫蘇。豆腐はねっとりとした食感でよかった。

・八寸
愛らしい竹の虫籠が出てきて、その虫籠の形をした蓋を取ると、かます寿司、鱧共和え、鱧八幡、茶巾栗、花海老味噌焼き、新銀杏酒煎り、銀杏芋、松葉素麺が盛り付けられている。私、竹でできた昔の虫籠って好きなのよね〜。浮世絵でも虫籠をかかげた女性が描かれている。

・向付
明石天然鯛、さごし焼霜、あしらい一式 
まぐろ、辛子、黄身醤油
まぐろは黄身醤油をたっぷり付けて食べるように言われる。私黄身醤油大好きなので、めちゃくちゃ美味しかった!すき焼きなどお肉を生卵に付けて食べるというのはあるけど、まぐろと生卵も合うのは初めて知った。

・蓋物
蓋を開けると、蓋の裏に金色で落ち葉や松ぼっくりなど秋の模様が描かれている。お椀の中を見ると、お出汁と大ぶりな具材がなみなみに入っているのに驚く。豊年椀といって、新嘗祭にちなみ、新米の出る時期に米の豊作を祝って作るお椀らしい。具材は煎って砕いた新米を鱧にまとわせて揚げて米俵に見立てたもの、松茸、玉子豆腐をくり抜いて三日月に見立てた三日月豆腐、小蕪、松葉柚子。鱧とお米は一旦神様にお供えして感謝をしているらしく、日本の神様に対する敬虔さが感じられた。てゆか、こう書くと日本は芸術と同じく料理も「見立て」が多いね!

・焼物
子持ち鮎塩焼き、蓼酢
少し前に、竹で編んだ籠に入った活きた鮎が見せられ、思わず声を上げてしまった。笑 水槽でなく、竹の籠というのが風流である。中で鮎が元気にバタバタやってるのもなんだか愛らしかった。陶製の焼き器に松の葉や紅葉と一緒に飾り付けられたのを、板前さんがお皿に取ってくださる。私は稚鮎が好きだが子持ち鮎もなかなか美味しい。

・中猪口
無花果揚げ出し、小芋、芋茎

・強肴
鱧しゃぶ、松茸、壬生菜、仏手柑。一人前の小さなお鍋が出て自分で出汁にくぐらす。お出汁もたっぷり飲めたのが嬉しかった。

・御飯
地鶏と栗御飯、三つ葉、振り柚子
最近は御飯と止椀が日本料理屋さんに行く時の楽しみ。普段ご飯と味噌汁のような食事をしないので、日本人らしさを感じてほっとする。

・止椀
牛蒡すり流し、揚げ牛蒡、黒胡椒
これがめちゃくちゃ美味しかった、牛蒡のとろっとしたお汁に黒胡椒がよく合って…お通じがよくなりそうな感じだった。

・水物
シャインマスカットのパフェ。チョコレートアイス 濃厚プリンと選べたんだけど、もちろんシャインマスカットのパフェを選択。シャインマスカットをマスカットソルベ、白ワインゼリー、マスカットの寒天ゼリーと合わせており、美味しかった!

また日本酒が竹を模した筒状の金属製の酒器で出てきたのも珍しかった。

帰りに門まで送っていただく時、道の脇に祠があるのを発見した。門の近くにもまた一つ小さな祠があり、こちらは白蛇を祀っているとのこと。白蛇は弁財天の使いらしい。やはり日本料理は西洋料理と違って神事を大切にしているからいいなあと思った。胃腸も休まるし。
写真、私は買い物帰りのおばさんっぽいんだけど、菊乃井のアプローチが美しく写っているので…笑