秀山祭九月大歌舞伎第三部「仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場」

秀山祭九月大歌舞伎第三部「仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場」「昇龍哀別瀬戸内 藤戸」鑑賞。

祇園一力茶屋の場」は2021年の壽初春大歌舞伎でも観ているけれど、今回は仁左衛門の大星由良之助、海老蔵の平右衛門という豪華キャスト。お軽は雀右衛門さん。雀右衛門さんも、こないだの「金閣寺」の雪姫といい、大きな役をやるようになりましたねぇ~。

2021年の壽初春大歌舞伎で「祇園一力茶屋の場」を観た後同年の五月大歌舞伎で「六段目」を観ていて、勘平がいかに悲劇のうちに切腹したかを知っているので(というか、通しで上演していたはずの昔は観客がこの前の段での勘平の切腹を知っていることが前提となっているはず)、今回の「祇園一力茶屋の場」で何も知らないお軽に父与市兵衛と夫勘平が死んだことが徐々に明かされていく場面は一層切なかった。「道行旅路の花聟」でもうかがえるように、お軽は少し軽い女ではあるが、愛嬌があって可愛らしい女なので、一層切ない。

この、平右衛門がお軽に父と夫の死を告げ・仇討ちのために死んでくれと涙ながらに迫る場面がカタルシスの場面であるが、その前後も雀右衛門のお軽の喋りの芸や、海老蔵の平右衛門との掛け合いは息が合っていて面白かったし、仁左衛門の遊び呆けたお大尽から仇討ちに燃える義臣へと変貌する様子も鮮やかだった。お茶屋で遊び呆けてる時も、仕草が一々粋でさすがだなあという感じ。