グランドシネマ「日本橋」

シネマ歌舞伎でグランドシネマ『日本橋』を鑑賞。これは2014年にも観ているのだけど、ほんとに素晴らしい作品。お孝が自分を「姉さんの人形」になぞらえて葛木を誘惑する場面で人形の映像がオーバーラップするのは余計だったけど(笑)

今回、お孝の最期の「(清葉の笛の音を)迦陵頻伽の迎えと聴き、死出三途を小唄で越します」というような台詞に心が留まり、お孝らしい台詞だなあ、泉鏡花じゃないとこのような美しい台詞は書けないと感動したのだが、あれ?原作の小説にあったっけと思った。

確認してみたけど、やっぱり泉鏡花の原作の小説では、お孝が警察に連行される前に葛木と共にお孝の家で身支度をする猶予を与えられ、そこで共に付き添っていた清葉に後のこと(葛木のこと)を頼んだ後、毒を飲んで自殺するという終わり方で、グランドシネマ『日本橋』の終わり方と違っており、上の台詞はない。ちなみに私は小説のこのお孝が毒を飲む場面で、「茶碗酒が得意の意気や、吻(ほっ)と小さな息をした」という描写が好きだ。

そこでさらに調べてみたら、『日本橋』には泉鏡花が自ら戯曲化したバージョンもあるらしくて(私は小説の方しか読んでいなかった)、戯曲の『日本橋』の方をひもといてみるとグランドシネマ『日本橋』と同じ終わり方になっていたし、上の台詞もあった。「ここで吹いて手向けておくれ、迦陵頻伽の迎えのように、その声を聞きながら、死出三途を小唄で越すよ」